ラジャン「フォールト・ラインズ」は、去年、フィナンシャルタイムズの年間ビジネス書大賞(Business Book of the Year 2010)を穫った本です。著者のラジャンは元IMFチーフエコノミストにして現シカゴ大学教授、ファイナンス論の大家であり、金融危機を事前に予言していたことで有名です。そんなラジャンが金融危機の原因について書いたこの本は、世界中で大絶賛されました。
しかし敢えて物申したい。ラジャンが金融危機の原因の一端をテイルリスクに帰着させているのは誤りだと。前の投稿で書きましたが、金融危機は、テイルリスクみたいに、与えられた発生確率で発生するものではない。必然です。
ラジャンは、一方で、金融危機の原因の一端をモラルハザードやエイジェンシー問題に帰着させています。これは、ファンドマネージャーや銀行経営者が自らリスクを負わないことをいいことに適当やってきた、という問題です。資金提供者に対する一種の裏切り行為でありまして、本ブログのテーマと大いに関係するところであります。この点に関するラジャンの見解には大いに賛成します。
しかし、テイルリスクとモラルハザードは両立しません。与えられた確率で発生するテイルリスクの前提は、みんなが誠心誠意義理堅く行動することです。モラルハザードがあるならば、テイルリスクの前提が吹っ飛びます。ラジャンは一方でテイルリスクに言及しながら、他方でモラルハザードにも言及する。モラルハザードを甘くみている証拠です。