フォーク定理は、利己的利他主義の核心、社会秩序の根底となる定理です。フォーク定理は、非協力ゲーム理論の定理であり、入門教科書岡田(2008)で易しく解説されています。きちんとした証明は、少し難しい教科書岡田(1996)第六章を参照。
フォーク定理は、裏切り者には仕返しするぞ、と脅すことで、裏切りを牽制しあい、その結果、互いに協力しあう均衡が生まれる。その条件を示す定理です。重要なポイントは次の3点です。
(1)最終回があると裏切り合いになります。無期限繰り返しゲームでなければなりません。
最終回で裏切られても、それで終わりなので、裏切り者に仕返しすることはできません。仕返しの脅しで裏切りを牽制できないので、裏切り合いになります。最終回の直前の回は、次の最終回で裏切り合いになることは分かっているので、やはり裏切り合いだけが均衡になります。その前の回も、そのまた前の回も、裏切り合いになります。この調子で全ての回が裏切り合いになります。このような推論を「後ろ向き帰納法」といいます。協力し合う均衡が生まれるためには、最終回があっては駄目だということです。無期限繰り返しゲームでなければなりません。
世界が終わる日には社会秩序が崩壊する、というのは予想できるでしょう。社会秩序を破っても制裁を加えられることがないので、社会秩序を守るインセンティブはありません。みな好き勝手に最後に日を生きるでしょう。最後の日の人類が滅亡する前の日も社会秩序は崩壊します。みな好き勝手に生きます。世界の終わりの日が遠い未来であっても、その日が何時か分かっていると、後ろ向き帰納法により社会秩序は崩壊します。現実に社会秩序が保たれているのは、世界の終わりが何時来るか分からないからです。
二千年前のローマ帝国で、ある新興宗教が、社会秩序の崩壊を願って、近いうちに世界の終わりが来るぞ、というホラ話を創りました。だから信者の皆さんは社会秩序に従う必要はありません、というロジックです。それだけでは教団内部の秩序も保たれなくなるので、ホラにホラを重ねます。この世界が終わった後は新しい世界が始まります、教団に反する者には最後の審判が下って神罰を受けます、というホラ話です。実にフォーク定理に沿った宗教です。結局、世界の終わりは来ませんでしたが、この新興宗教は信者を増やしていって、ついにはローマ帝国の国教になってしまいました。
無駄話が長くなったので続きは次回の投稿で。
続きの予定
(2)将来をあまり考えないと、裏切り合いになります。
(3)協力する均衡は複数均衡の一つです。裏切り合いも均衡として残ります。